ドラマ「乱歩R」

わたしは面白いと思ったドラマ「乱歩R」は大層評判が悪いようですね(苦笑)。
で、この「乱歩R」確かにスキだらけの脚本で、投げっぱなしで拾わないエピソードが多過ぎるし、三代目明智小五郎(!!)を演じる藤井隆は演技が上手い訳でもないし、正統的な男前でもないし(わたしははっきりいってタイプなんですが)、怒る人の気持も良く判るんだけれども。
それにミステリとしての統合性はゼロに近いので、ミステリ要素を期待した人はさぞかしがっかりしたことでしょうし。わたしは正直言ってミステリ要素も、面白い作品になることも、まったく期待してなかったので(つーかものすごい酷い作品になると想像してた※)、想像よりはずいぶんましだったので、あら、思ったより面白いわ、と思ったの。それにどんなに映像が、セットが低予算らしくチャチくても、そんなの平気!Vシネマで見慣れてるから!

でも、結局このドラマのことが好きになっちゃったんだけれども、それは、思い悩む三代目明智小五郎を演じる藤井隆が自分の髪の毛をぐしゃぐしゃと掻きむしった瞬間に、藤井隆の中に、うっかり明智小五郎の幻を見てしまったから。

「そして、かれは人と話している間にも、指で、そのモジャモジャになっている髪の毛を、さらにモジャモジャにするためにように、ひっかき回すのが癖だ。」(D坂の殺人事件/江戸川乱歩

その明智小五郎の癖を藤井隆が再現した瞬間に「ああ、この人ほんとに明智先生の孫なんだ」と思って、ものすごーーーーくドキっとしました。ああ、本当にこの人は明智先生と血がつながってるんだ!!と思って(ドラマの中なのに)。

いまやすっかり老人になってしまったかつての小林少年(大滝秀治)が三代目に語って聞かせる思い出話の中の、いまはもういない明智小五郎の幻を思って、わたしはちょっとだけ涙ぐんだのでした。


公式サイトhttp://www.ytv.co.jp/rampo/


※基本的に江戸川乱歩の少年探偵団モノって映像化(いっぱいしてるけど)を今しようとするとすごい難しいと思っていて、原作通り丁寧になぞったら、ものすごくチャチい映像になるだろうなあ、と。まして、いまや、猟奇だの怪人だの、妖怪だの幽霊だのが、トリックとしてはすっかり通用しなくなってるし。

初期はともかく、中期以降の明智小五郎(初代、つーか乱歩作品のね)先生ときたひにゃ、推理なんてほとんどしないし。最後に出てきて、なあに簡単なことですよ、とべらべら結論を喋っておしまい。だったら始めになんとかしろよ!と思ったら、あの時はわたしもわからなかったのです、とおっしゃる明智先生、その繰り返し。

そんなにいっぱい失敗しまくるんじゃ、あんまり名探偵じゃないのでは?と当時小学生だったわたしは「少年探偵団」シリーズを読みまくりながら、ちょっと考えこんだりもしたんでした。