あなただけのちいさないえ

良く行く古本屋さんで、かわいい表紙に惹かれて、何気なく手に取ったこの絵本。
「ひとは だれでも、じぶんだけのちいさないえを もつひつようがあります」という出だしの文章につい引き込まれて購入。

あなただけのちいさないえ

あなただけのちいさないえ

  • 作者: ベアトリス・シェンクド・レーニエ,アイリーンハース,Beatrice Schenk De Regniers,Irene Haas,ほしかわなつよ
  • 出版社/メーカー: 童話館出版
  • 発売日: 2001/07
  • メディア: 単行本
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この絵本を読んで「なまいきシャルロット」という映画で、主人公のシャルロット・ゲンズブール(役名もシャルロット)が、かんしゃくを起こして大暴れした後に、今の自分の気持ちを表現する言葉を持たないことに気がついて「(いいたいことがあるけど)言葉がない」とつぶやく、というシーンをぼんやりと思い出しました。

子供のころ、わたしは自分が物事に対してどのように感じ、思うのか、そしてそれは正しいのか間違ってるのか、それらを表すことばはあるのか、あるのだとすればそれを自分が獲得することができるのか、ということをぼんやりとしか理解できないでいました。なにか言いたいことや思うことがあっても、それはことばにはならず、ぐるぐると頭のなかでうずまいてたのです。

子供が「言葉を獲得」していく、というのはすごいことなんじゃないか、と、今考えてみてもそう思うのです。それをはっきりと自覚しているかどうかは別として、そういったことごとについて悩み、「自分をあらわす言葉」を持たないことにとまどいを覚える子供の数は多いのではないか、と思います。

そして、そういった混乱を沈めるために、たとえちいさな子供であっても、時々、ひとりでしずまる時間を持つことが重要なときがあるのだと思う。

この「あなただけのちいさないえ」という絵本では、一人の時間を持つために有用な方法のいくつかをユーモラスに紹介し、ちいさな子供にも自分一人の時間を持つ権利があり、それを持ちたいと願うことはちっともおかしいことではないこと、そして子供たちが自分一人の時間や場所を尊重して欲しいと願うように、あなたのまわりの大人のひとたちも自分一人の時間を持ちたいときがあるのだ、ということを、モノクロームのうつくしい挿絵と、作者自身の体験に基づく「わたしが ちいさな おんなのこだったころ、わたしは しょくたくのしたに すんでいました」という風なやさしい言葉でわかりやすく綴られています。

子供の世界(多分大人の世界でも)では「みんなでいることがあたりまえ」であるように感じてしまったり、「みんなとちがうことを考え」ることをまるで悪いことであるかのように考えたりすることがあるかもしれない、そういったときに、この絵本を読むと、とまどいがちょっと薄らぐかもしれない、だからわたしのまわりのちいさな子供(例えば友達の子供や、わたしの甥が)もし、本を読むことに興味を示してくれるなら、この絵本をプレゼントしたいです。

そして、子供だけでなく、自分一人の時間を持つことの重要性をとっくに知っている大人(もちろんわたしも)にも「ひみつのいえ」を持つ愉しみをそっと思い出させてくれるすばらしい絵本だと思いました。