黒沢清監督の新作映画「LOFT」を見ました。

さいころのわたしはあまりにも好奇心の旺盛な子どもだったために、割合に大変な目に(自分のせいで)よくあっていました。

例えば旧式のガラス製の体温計の水銀部分の銀色がとてもきれいで仁丹みたいに見えて、これを舌の上で転がしたらどんな感じだろう?という好奇心に打ち勝てなくて、口の中でバリリと体温計をかみ砕き、えらい騒ぎになったり(即、口の中のものを吐きださされ、救急車で運ばれて胃洗浄、生まれて初めての胃洗浄は本当に苦しくて、このようなバカなことは二度とやるまい、と固く誓った。)

母親の自転車の後ろに乗せられて揺られていたときに、後輪を見つめているうちに、このくるくる回る後輪を自分の足で止めたらどんな感じかなーという好奇心に打ち勝てなくて、足でトンってしたら、足首が自転車の後輪に絡まってえらいことになってしまい(そして救急車)もうちょっとでアキレス腱を切ってしまう所だった。(これも本当に死ぬほど痛くて二度とやるまい、と固く誓った。しかしわたしがダメな所は確かに自転車の車輪に足を絡めることは二度としなくても、他にも色々と好奇心が行過ぎて身を滅ぼす人生そのものはあんまり改まってない、ということです。オトナになったから、随分緩和したけど。)

「LOFT」を見たあとになんとなくそんなことを思い出していて、というのはわたしにとては黒沢清監督の映画の「恐怖」というのはそういう類いの恐怖で、「絶対にそこにいってはいけない」と知りつつも「そこ」に行ってしまうという瞬間を切り取られていて、怖くはないけど、やっぱり怖くて、だからこの映画はとても好きだ、と思ったのでした。

ラブストーリーのような、ホラーのような、なんともいえないヘンな映画だけれど、
豊川悦司がミイラのことを呪いとして受け止めながらも、どうしてもミイラに惹かれる気持を抑えることができないさまに、すごく共感しながらこの映画を見ました。とてもいい映画でした。