[哀川翔]三池崇史監督、哀川翔主演の「極道黒社会/RAINY DOG」(1997/大映)をビデオで見る。

hanaco2003-12-08



子供と大人という組み合わせのロードムービー台北の中を逃げ回るので、ロードムービーと言うほどは逃げていないのかも知れないけれども)に、もともとひどく弱い、ということを抜きにしてもこの映画はすごく好き、本当に好き。


オール台北ロケ、出演者のほとんどが中国人、撮影がエドワード・ヤン監督の「カップルズ」の李似須、セリフのほとんどが台北語(哀川翔でさえも)ということもあって、日本映画なのにまるで中国の映画を見てるような錯覚を起こし、無国籍というか、なんかヘンな感じです。


でも、セリフのほとんどが台北語、田口トモロヲ哀川翔の会話、そして哀川翔のモノローグだけが日本語、というのがものすごく効果的で、台北の日本人である彼らの行き場のなさや、孤独が、日本語のモノローグを通じてひどく切実に、胸に響くのです。


主人公のユウジ(哀川翔)はヘマをしてしまった為に日本を追われた元極道の男。そして、ユウジを殺せと命じられて台北に来たものの、ユウジを殺すことが出来ず(殺し屋としての腕が違いすぎて話にならない)、仕方なく3年もの間台北に留まる男、本阿弥(田口トモロヲ)。


「へまをした極道なんて人間のクズだ」と自分自身につぶやき、自らを独房に閉じこめられた囚人に喩え、ひとりで生きる男ユウジ。彼は毎日本当に何もない、ただコンピュータとベッドしかない狭い部屋でうつぶせになって眠り、雨の多い台北の町で「雨の日は外に出ない」というジンクスを頑なに守り、依頼されると人を殺し、それ以外は精肉工場(店かもしれない)で働いている男。


ある日、ユウジは昔の恋人から「あなたの息子だ」という少年チェンを押し付けられる。最初はチェンを無視する(つーか道端に放置。これはちょっとあんまりだと思った)ユウジだったが、殺した男の弟に命を狙われるようになり、「台北を出たい」と漏らした行きずりの娼婦リリーとチェンの3人で、台北の町から逃げだそうとする。
娼婦と素性の知れない子供(多分本当の子供ではないだろうとわたしは思った)と殺し屋の疑似家族。そこにあるのは多分愛情ではない、でも一瞬だけ、ほんの一瞬だけ(多分)彼にもそういうものを信じられる瞬間が訪れるのだ。


名前を呼びながら、自分の子供かもしれない少年を抱きしめるユウジ、それはただの錯覚かもしれないけれども、それでもやっぱり愛された記憶があれば、子供はきっと生きていけると、わたしは思うのです。