[哀川翔] 「極道恐怖大劇場 牛頭」を見たよ

極道恐怖大劇場 牛頭」(監督:三池崇史 主演:曽根英樹 2003)を見ました。
カンヌ映画祭招待作品なのにVシネマ/「もしデヴィッド・リンチがヤクザホラーを撮ったら?」という試み、というフレコミ/つーかヤクザ・ホラーって一体、何?/冒頭で哀川翔がすごい真面目なカオで「この犬はヤクザだけを襲うように訓練されたヤクザ犬だ、殺られる前に殺っとかないと」といって、いたいけなチワワをボッコボコにするらしい/牛頭つーのは頭が牛・体が人間のバケモノらしい/海外での映画上映が続々と決まっているのに、日本ではやっぱりVシネマ。



という噂を聞いて、見るのがなんだかおそろしく、本当におそるおそる見たのですが、見たらものすごーーく面白かったです。血も少なかったし、チワワはぬいぐるみだし(動物好きなんで…)安心して見れた。

頭がおかしくなって奇行が目立つようになった尾崎(哀川翔)を名古屋に「ヤクザ処分場」に連れていって処分するように親分(石橋蓮司)に命じられた南(曽根英樹)だったが、以前命を助けてくれた兄貴分尾崎に恩義を感じ、なかなか実行することが出来ない。しかし、名古屋へと向かう道中で、暴走する尾崎の奇行を押さえつけるうちに、南は間違って尾崎を殺して(というより事故だと思う)しまう。
しかも、ちょっと目を離したスキに尾崎の死体が消えてしまった!
南は尾崎の死体を捜して駆けずり回るのだったが…。

というのが大体のあらすじだけれども、ここまで書いた時点で、あらすじなんか書くのばかばかしくなってきた。

全編が、つげ義春の「ねじ式」を総天然色にして、つげ義春性を抜き、バカ方向に振り切ったような、内田百ケンのシュールな小説の、シュールだけを抜き取ってバカ方向に引っ張ったような、ヘンな色合いの映画で、よく解らない世界が延々と続く2時間。

それでずっーーとゲラゲラ笑いっぱなしの、心の底から楽しく見れる映画であるにも関わらず、良く考えるとめちゃくちゃ怖い。


間に挿入される、「尾崎と南の回想」の会話部分のばかばかしさ、いきなりあらわれる吉野きみ佳(すごいエロい、素晴らしい!)の突拍子のなさ、石橋蓮司の怪演ヘンタイっぷり、まともな人間は主人公の南だけで、尾崎はもちろん、旅館の姉弟も米屋の主人も、酒屋の夫婦も、喫茶店の店員も客(往年の吉本新喜劇黄金コンビ、間寛平木村進!!うれしくて涙出そうになったよ)も、南以外のすべての登場人物全員が、狂人なのだ、ああ、恐ろしい。


あえてこの映画に似ているものを探すならば、ほのぼのと笑わせて人が死にまくる妖怪だらけの世界である、水木しげるの漫画とか、そういうのに近い世界かなあ。


三池監督はこの狂った脚本に全く手を入れなかったらしい、この脚本家は佐藤佐吉、「OH!マイキー」の脚本を書いた人です。

普通のおばさんが運転するごく普通の車を「あれはヤクザだけを轢き殺すように訓練されたヤクザカー」だ、と言い張って、すごくマジメな顔で拳銃片手に立ち向かっていく哀川翔が最高。