のだめカンタービレ

原作はダイスキで、でもこのドラマにはとにかく全然期待していなくて、なんといってもそれは、ここ数年で(多分)最悪の脚本家、衛藤凛が脚本、と聞いてガックリしていたのです、キャストがいい感じなだけに余計。しかし、原作通りということに原作者がこだわった(という噂)だけのことがあって詰め込み過ぎのきらいはあるものの、セリフも間合いも原作通り!衛藤さんには原作プラスアルファのめくるめくドラマの楽しみとか一ミリも期待していないので、原作から逸脱しないようにさえしてくれれば(原作が面白いから)、これはなんとかなるかも、予想よりは全然面白かったです。あとドラマ版「電車男」と(ほぼ)同じスタッフ、ということで演出が素晴らしい。

衛藤さんの脚本の(たくさんある)致命的な欠点のひとつに、「いつだれが恋に落ちたのかさっぱりわからない(ゆえに視聴者おいてけぼり)」というのがあって、例えばドラマ:スローダンスで主演ふたりはともかくも(それでもいつ恋に?さっきまでお互いに違う人のこと好き好きゆうてたやん!って感じなんだけど、まあ主演という時点で誰が誰と恋に落ちるのか視聴者にはわかってるからね)、広末涼子がいつ藤木直人に恋をしたのかがまったくわからなくて、それで広末さんが藤木直人に「どうしてわたしの気持ちがわからないの?」という態度をとりつづけても、視聴者にもまったく広末さんの恋心がわからないし、ただただ藤木直人が気の毒な気もしたし、また藤木直人も何を考えてるのかわからないので、ただただ頭の中が?マークでいっぱいになり、そして、そのことにまつわる何かの面白みがあるわけでもないので、ただただ視聴者は置いておかれるのだ。(ちなみにわたしは広末涼子のことはかなり好きなので、広末さんにこんなセリフを言わせる脚本に余計に腹が立ちました)

そんなわけで圧倒的に「恋心」を描く回路が欠落している(し、それを補う他の面白みもない)衛藤さんの脚本ですが、もうそこはチカラ技で、上野樹里ちゃん演じるのだめが玉木宏演じる千秋先輩に「フォーリンラブー」と叫びながらハートマークを飛ばす、という力技でカバーしたり、演出でできることは全部やる!という気合いで本をうまくカバーしていたと思います。

とにかく、のだめを演じる上野樹里ちゃんがかわいい。あの「のだめ口」とかピアノを弾くときのあの手の動きの再現度とか本当にすばらしい。原作を読んだ感じではのだめの演奏というのはもっとエキセントリックなものを想定していたのだけれども、天才の演奏を再現なんてのはさすがに無理か。でものだめと千秋の連弾はとても楽しかったし、最初キャストを聞いたときに千秋に玉木さん?イメージ違うよ、と思ったし、千秋のノーブルさやカリスマ性は全然感じらなかったけれど、でも予想よりずっと好演していたし、髪もちゃんと黒いし(重要)、やっぱりとても男前なので、モテモテ設定に説得力があるかも。

漫画内アニメ「プリごろ太」のグッズ(グッズ欲しい…)や、衣装や小道具の漫画再現っぷりも本当に楽しくて、思ってたよりはずっと楽しめました。*1

そして、見る前からわかってたけど竹中直人……、もうああいう役を禁止してほしい(シャルウィダンスで今のように「変身」してしまう前の竹中さんのことは好きでした)。

エンディング・テーマの「ラプソディ・イン・ブルー」のアニメっぽい感じもとても楽しかったです。

*1:漫画原作における衣装の再現度の重要さ、をおろそかにしたことが「ハチミツとクローバー」映画が商業的にあんまりふるってないことと大きく関係している、というのが持論。漫画の実写化に視聴者が一番期待することは「漫画の小道具・衣装の再現」だと思う。ハチクロ映画(予告しかみてなくて、それで判断してるけど)のはぐちゃんの衣装、確かに美大生っぽくはあるけど、あれは「はぐちゃんルック」じゃない!